
ヒゲワシ
英名:Bearded Vulture
学名:Gypaetus barbatus
分類:タカ目タカ科ヒゲワシ属
ハゲワシ類の一種です。属名の Gypaetus はギリシャ語の「ハゲワシ(gyps)」と「ワシ(aetos)」を組み合わせたものです。種小名の barbatus はラテン語で「あごヒゲのある」を意味し、嘴の下にある黒い剛毛がヒゲのように見えることに由来します。
ヒゲワシの特徴
どれくらいの大きさ?体の特徴は?
体長94-125cm、翼開長231-283cm。非常に大型の猛禽類です。
他のハゲワシと異なり、頭部には羽毛が密に生えています。背中と翼は濃い灰色で、頭部と腹部は白またはクリーム色です。目の周りが赤く、嘴の下には黒い「ヒゲ」があります。特筆すべきは、多くの個体が鉄分の豊富な土や泥で水浴びをし、腹部の白い羽毛を意図的に赤褐色に染める「化粧行動」です。これは、自身の地位を示すためのディスプレイと考えられています。
どこに生息している?
スペインのピレネー山脈、アルプス、アフリカ、中東、中央アジアの山岳地帯に、不連続に分布します。
標高の高い、険しい山岳地帯や断崖絶壁のある渓谷に生息し、広大な行動圏を必要とします。
何を食べて生きているの?狩りの方法は?
食性の80~90%を動物の骨や骨髄が占めるという、特殊な食性を持ちます。他の肉食獣が食べ残した死骸の骨を主食とします。
小さな骨は丸呑みにしますが、大きな骨は足で掴んで上空へ運び、「ボーン・ドロッピング・サイト」と呼ばれる特定の岩場の上から落として叩き割り、 中の骨髄を食べたり、飲み込める大きさのかけらにしたりします。この行動は、学習によって受け継がれる高度な技術です。
絶滅は危惧されている?
IUCNレッドリストでは NT (準絶滅危惧) に分類されています。
人間による迫害、家畜を狙う捕食者駆除のための毒餌による二次被害、電線との衝突、風力発電タービンとの衝突、そして餌となる野生の有蹄類や家畜の減少などが主な脅威です。アルプスでは、かつて絶滅しましたが、再導入プロジェクトにより個体群が復活しつつあります。
IUCNレッドリストとは、国際自然保護連合(IUCN)が作成している、世界で最も包括的な絶滅のおそれのある野生生物のリストです。正式名称は「The IUCN Red List of Threatened Species™」といいます。
IUCNレッドリストの分類
分類(英名) | 分類(和名) | 説明 |
---|---|---|
EX (Extinct) | 絶滅 | 最後の1個体が死亡したことが疑う余地のない種 |
EW (Extinct in the Wild) | 野生絶滅 | 本来の生息地では絶滅し、飼育下・栽培下でのみ生存している種 |
CR (Critically Endangered) | 深刻な危機 | ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高い種 |
EN (Endangered) | 危機 | CRほどではないが、近い将来、野生での絶滅の危険性が高い種 |
VU (Vulnerable) | 危急 | 野生での絶滅の危険性が増大している種 |
NT (Near Threatened) | 準絶滅危惧 | 現時点では絶滅危惧ではないが、将来的に移行する可能性がある種 |
LC (Least Concern) | 低懸念 | 絶滅リスクが低く、保全上の懸念が少ない種 |
DD (Data Deficient) | 情報不足 | 評価するための情報が不足している種 |
NE (Not Evaluated) | 未評価 | まだ評価が行われていない種 |