
南米の熱帯雨林に君臨する、世界最大級の猛禽類「オウギワシ」。その力強さは、ハイイログマ(グリズリー)と同等の大きく鋭い鉤爪と、人間の腕程度なら余裕で粉砕する握力を持つことで知られています。
そんな最強の猛禽が主食とするのは、ナマケモノ。ナマケモノを主食とする猛禽類はほかにあまりおらず、この記事ではその独特の生態を詳しく解説していきます。

そもそもオウギワシとはどんな鳥?という方は先にこちらから読むのがおすすめです。
オウギワシの食性とその獲物
オウギワシは、熱帯雨林の樹冠部(森林の上層部)に生息する動物を専門とするハンターです。その食事の約半分は、フタユビナマケモノやミツユビナマケモノといったナマケモノ類が占めています。
残りの半分も、ホエザルやサキといったサル類をはじめ、イグアナやアライグマ、オウムなどが中心で、彼らが狙うのは地上ではなく、「木の上で暮らす、比較的大型の動物」であり、樹上での狩りに長けていることがわかります。
基本は樹上での狩りが大半ですが、時にはげっ歯類やイノシシ類など地上の動物を捕食することもあるようです。
ナマケモノを狩る、3つの理由
オウギワシがナマケモノをはじめとする樹上生物を好んで狩ることについて、考えられる理由が3つあります。
理由①:オウギワシの生態に適している
オウギワシは、フクロウと共通する特徴である顔盤を持つ数少ない昼行性猛禽類の一種です。普段生息する熱帯雨林の樹冠部は日光がほとんど届かない深い森であり、オウギワシはその環境下で顔盤を活かして樹上生物の活動音を検知し、獲物を捕らえています。
理由②:十分な大きさでカロリー効率が良い
オウギワシが獲物としているナマケモノやサルなどは、大きいと体重が10kg近くにもなり、自身とヒナの栄養を賄う上で、一度の狩りで十分なカロリーを得られる、理想的な大きさの獲物です。小さな鳥やトカゲを何度も狩るよりも、大きなナマケモノを一度狩る方が、はるかに効率が良いのです。
理由③:獲物をめぐる競合が少ない
オウギワシの特性や樹冠部という環境、獲物の大きさなどが相まって、オウギワシと同じく樹上の獲物を主食とする捕食者はほとんどいません。ナマケモノを安定して狩ることができる大型の捕食者は、事実上オウギワシだけなのです。
生態系の頂点に立つ「効率家」
オウギワシがナマケモノを専門に狩るのは、広大で複雑な熱帯雨林という環境で、最小の労力で、最大のリターン(カロリー)を得るための、非常に賢い選択なのです。
また彼らの存在は、熱帯雨林のナマケモノやサルの個体数を健全に保つ、重要な役割を担っています。オウギワシとナマケモノの関係は、一見すると一方的な捕食ですが、実は、熱帯雨林全体のバランスを保つための食物連鎖の環の一つなのです。