
フィリピンワシ
英名:Philippine Eagle
学名:Pithecophaga jefferyi
分類:タカ目タカ科フィリピンワシ属
世界最大級のワシの一種です。属名の Pithecophaga はギリシャ語の「サル(pithikos)」と「食べる(phagos)」を組み合わせたもので、「サルを食べるもの」を意味します。
フィリピンの国鳥に指定されており、国の誇りであり、自然保護の象徴とされています。政府と多くのNGOが協力し、生息地の保全や飼育下繁殖、そして国民への啓発活動など、懸命な保護活動が続けられています。
フィリピンワシの特徴
どれくらいの大きさ?体の特徴は?
体長86-102cm、翼開長184-220cm。
背中は暗褐色で、腹部は白色です。最大の特徴は、長くて尖った、白と褐色のまだら模様の冠羽です。この冠羽は興奮すると大きく逆立ち、非常に威厳のある姿となります。嘴は非常に大きく、高さがあり、青みがかった灰色をしています。目は青灰色で、猛禽類としては珍しい色合いです。
どこに生息している?
フィリピン諸島のルソン島、サマール島、レイテ島、ミンダナオ島にのみ生息する固有種です。
手つかずの広大で原生的な熱帯雨林を必要とします。一組のペアが繁殖するためには、40~110平方キロメートルもの広大な森林が必要とされています。
何を食べて生きているの?狩りの方法は?
森林に生息する中型の哺乳類を主食とします。フィリピンヒヨケザル(翼膜を持つ哺乳類)が最も重要な獲物ですが、サル、ヘビ、オオトカゲ、鳥類なども捕食します。
森林の樹冠部を主な狩り場とし、ペアで協力して狩りを行うこともあります。一方がサルの群れの注意を引き、もう一方が背後から襲うといった、高度な戦術を用いることが報告されています。森の生態系の頂点に君臨するトッププレデターです。
絶滅は危惧されている?
IUCNレッドリストでは CR (深刻な危機) に分類されており、世界で最も絶滅が危惧されている鳥類の一つです。
大規模な森林伐採による生息地の喪失と分断が、絶滅の最大の要因です。また、狩猟や密猟も深刻な脅威となっています。繁殖率が非常に低く(ペアは2年に1度、1羽の雛を育てるのみ)、一度失われた個体群の回復は極めて困難です。
IUCNレッドリストとは、国際自然保護連合(IUCN)が作成している、世界で最も包括的な絶滅のおそれのある野生生物のリストです。正式名称は「The IUCN Red List of Threatened Species™」といいます。
IUCNレッドリストの分類
分類(英名) | 分類(和名) | 説明 |
---|---|---|
EX (Extinct) | 絶滅 | 最後の1個体が死亡したことが疑う余地のない種 |
EW (Extinct in the Wild) | 野生絶滅 | 本来の生息地では絶滅し、飼育下・栽培下でのみ生存している種 |
CR (Critically Endangered) | 深刻な危機 | ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高い種 |
EN (Endangered) | 危機 | CRほどではないが、近い将来、野生での絶滅の危険性が高い種 |
VU (Vulnerable) | 危急 | 野生での絶滅の危険性が増大している種 |
NT (Near Threatened) | 準絶滅危惧 | 現時点では絶滅危惧ではないが、将来的に移行する可能性がある種 |
LC (Least Concern) | 低懸念 | 絶滅リスクが低く、保全上の懸念が少ない種 |
DD (Data Deficient) | 情報不足 | 評価するための情報が不足している種 |
NE (Not Evaluated) | 未評価 | まだ評価が行われていない種 |
出典
- The Peregrine Fund – “Philippine Eagle”
- eBird – “Philippine Eagle”
- Animal Diversity Web – “Pithecophaga jefferyi”
- EDGE of Existence – “Philippine Eagle”
- IUCN Red List – “Pithecophaga jefferyi”