
アムールハヤブサ
英名:Amur Falcon
学名:Falco amurensis
分類:ハヤブサ目ハヤブサ科ハヤブサ属
その名が示す通り、ロシア極東のアムール川流域周辺で主に繁殖する小型のハヤブサです。和名では「アカアシチョウゲンボウ」と表現されることもあり、かつてはコチョウゲンボウの亜種とされていましたが、現在は独立した種として扱われています。
アムールハヤブサの特徴
どれくらいの大きさ?体の特徴は?
体長26-30cm、翼開長63-71cm。
雄雌で羽の色が大きく異なります。オスは全体的にスレートのような暗い灰色で、腿と下腹部のみが鮮やかな赤褐色です。メスは背中はオスに似ていますが、腹部には白地に黒い縦斑があり、顔には細いヒゲ模様があります。共通して、足と目の周りの裸出した皮膚は赤色です。
どこに生息している?
シベリア南東部から中国北東部、朝鮮半島北部で繁殖し、冬は遠くアフリカ南部(南アフリカ、ボツワナなど)で過ごします。
繁殖地では、農耕地や草原が混在する開けた森林を好みます。越冬地では、開けたサバンナや草地を利用します。
何を食べて生きているの?狩りの方法は?
主に昆虫(バッタ、シロアリ、トンボなど)を食べます。特に、渡りの時期や越冬地では、大量発生するシロアリを主食とします。
本種は、猛禽類の中でも最も驚異的な長距離渡りを行うことで知られています。 繁殖地から南下する際、インド北東部に数万羽という大集団で集結し、エネルギーを蓄えます。その後、アラビア海からインド洋を、数日間飲まず食わずで無着陸飛行し、アフリカ大陸へと渡ります。 この約3,000kmにも及ぶ海上飛行は、鳥類の渡りの中でも極めて過酷なものの一つです。
絶滅は危惧されている?
IUCNレッドリストでは LC (低懸念) に分類されています。
かつて、渡りの中継地であるインドのナガランド州で、食料として年間10万羽以上が大規模に捕獲されていることが発覚し、世界的な問題となりました。しかし、その後のインド政府および国内外の自然保護団体による精力的な保護活動と啓発キャンペーンにより、密猟は劇的に減少し、現在では地域住民が彼らを守る側に回っています。これは、地域社会を巻き込んだ保護活動の偉大な成功例として知られています。
IUCNレッドリストとは、国際自然保護連合(IUCN)が作成している、世界で最も包括的な絶滅のおそれのある野生生物のリストです。正式名称は「The IUCN Red List of Threatened Species™」といいます。
IUCNレッドリストの分類
分類(英名) | 分類(和名) | 説明 |
---|---|---|
EX (Extinct) | 絶滅 | 最後の1個体が死亡したことが疑う余地のない種 |
EW (Extinct in the Wild) | 野生絶滅 | 本来の生息地では絶滅し、飼育下・栽培下でのみ生存している種 |
CR (Critically Endangered) | 深刻な危機 | ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高い種 |
EN (Endangered) | 危機 | CRほどではないが、近い将来、野生での絶滅の危険性が高い種 |
VU (Vulnerable) | 危急 | 野生での絶滅の危険性が増大している種 |
NT (Near Threatened) | 準絶滅危惧 | 現時点では絶滅危惧ではないが、将来的に移行する可能性がある種 |
LC (Least Concern) | 低懸念 | 絶滅リスクが低く、保全上の懸念が少ない種 |
DD (Data Deficient) | 情報不足 | 評価するための情報が不足している種 |
NE (Not Evaluated) | 未評価 | まだ評価が行われていない種 |